4月29日
四月五日から「世界の子ども交流コンサート」のための和太鼓ワークショップをやらせてもらっている(計四回の練習で五月四日に東京国際フォーラムで発表/他のワークショップとも合同)。
東京都が募集して集まった、七歳〜十七歳の子どもたち15人が和太鼓コースに参加しているが、小学五年生くらいの年齢が中心で、みんなとても元気だ。
子どもが元気なのは当たり前だけど、その当たり前の子どもたちを実はあまり見かけなくなったと思っていた。太鼓があればそれだけで元気になるわけでもない。やる気があって、太鼓が好きで集まった子どもたちの、元気が嬉しい。
ここでは『宝の海』という曲を作って叩いているが、せっかく作ったので僕のワークショップ「太鼓アイランド青葉」の教室で大人も叩くことにした。子どもたちの良さを活かす構成と、大人が叩く場合とは違ってくるので、大人の方は沖縄風に『宝ぬ海』と名前も変えた。
そういう訳で、この曲と付き合っているともっと内容を脹らませたものも作りたくなって、宝の海をテーマにステージも一つまとめることにした。
それがプーク人形劇場公演『てんドンカツドンたいこドン・2/宝の海編』だ。
この公演は、前回(昨年の公演)、太鼓の中から生まれた人形のドンコちゃんと海に出かける芝居仕立てで進行する。短いモノだが台本も書いた(こうして徐々にではありますが、20年以上前に離れた演劇の世界にすこ〜しだけまたすり寄ってきている)。
おとうさんも、童心に返って見に来ませんか?ん?子供がいなくてもいいんです。はい?独身男性?来て下さい大歓迎です。四十半ばに近い男が必死に考えたんですからね、いっしょに叫んでも恐いモノはありません。
くじら くじら くじら くらげ 見つけた
たい たい いた いた たい たい いた いた
くじら いるか かつお まぐろ くじら いるか かつお まぐろ
とびうお とびうお とびうお とびうお とびうお とびうお とびうお 跳ねたよ!
(富田和明作曲『宝の海』より抜粋)
●富田和明と遊ぶ『てんドン カツドン たいこドン』こどものための太鼓コンサート
5月13日(土)2回公演 11:00〜 14:00〜 上演時間は約60分
出演/富田和明 井上智彦 人形も特別出演 人形遣い/渡辺 真知子
入場料/前売 たいこドンチケット 2,400円 親子ドンチケット 4,400円
東京都渋谷区/プーク人形劇場(新宿駅 南口)
(問)プーク人形劇場 ? 03-3379-0234インターネットでご覧の皆様に特別チケット一割引いたします
ぜひ御連絡下さい
●富田和明と叩く『みんな いっしょに たいこドン・2』子どものための太鼓ワークショップ
8月28日(月)(A)コース・入門者 11:00〜60’(参加費 2,000円)
(B)コース・経験者 13:30〜90’(参加費2,500円)
内容/『宝の海』を抜粋して叩きます
東京都渋谷区/プーク人形劇場(新宿駅 南口)
(問)プーク人形劇場 ? 03-3379-0234※5月4日「世界の子ども交流コンサート」(富田が和太鼓ワークショップ指導、東京打撃団がゲスト出演)のテレビ放映予定は、6/11(日)13:00〜14:10 NHKBS2 衛生第二放送〈BSイベントホール〉
5月1日
東京打撃団淡路公演『二千年を打つ会』本番の、「石敢當(サシビ)」演奏中に左肋骨を折った。
今年に入ってから左肩鎖骨腱鞘炎で横打ちは多少のセーブをして叩いていたのだが、淡路では「わしゃ、もうどないなってもええわ〜いてまえ〜」とつい、セーブする気持ちを忘れたのがいけなかったのか、やってしまった。しかし、肋骨を折ったのは初めてだ。
折ってどうなるのか?まず、左手で物を持つのは痛くない。その手を上にあげるのが痛い。普通に立っている状態は痛くない。座っていても痛くない。上半身をひねると痛い。と、ここまでは普通の筋肉痛とも見分けがつきにくい。違うのは、ここからだ。
くしゃみ一回が、いきなりこぶらツイストをかけられたような痛みだ。連続で来られると死にそうだ(瞬間的に)。それに「はぁっ!」と、掛け声が出せなくなる。「うりゃ!」もダメだ。「どっこい!」も「そりゃそりゃ!」も「よいしょ!」もダメだ。大声で笑うにも笑えない。「ふう〜」と溜息は出せる。また、便器にまたがってフン張るとひどい目にあう(僕は慢性的に軟らかいので助かった)。などの症状が出ればビンゴ!骨折である。
淡路公演二日後の広島公演で掛け声が出せなかったのは、非常に情けなかった。何とか出そうとすると、出した後でくしゃみと同じ激痛が走るから出せない。舞台でのこんな体験は、何十年と叫んで叩いてきて初めてだった。
その後、過激な運動は避け、肋骨用バンドを巻いていると、約二週間で大声も出せるまでに回復した。横打ちスタイルは、正面打ち、ふせ打ちスタイルと比べ、体に無理がある姿勢なのでこれで激しく叩いていると、長年の蓄積で故障が起きやすいことは分かっている。分かっているけど、止められない。
その昔、近藤克次さんを鼓童の舞台から下ろさせたのも、この横打ちだった(’85年9月腰痛のため一時舞台を離れる)。
克次さんと僕は、鼓童誕生からずっと『三宅』ソロを打ち続けた。あのソロの固定された股大開きじっと我慢のほらあそこがもう床についちゃうような低姿勢が腰には一番よくない(三宅島のオリジナル『神着(かみつき)木遣り太鼓』は左右に腰の移動が常時続くのでうまくバランスがとれているが)。それを年間百数十回ステージをこなしていけば必然的に疲労する。
身体を壊してでも、それでも止められない魔力が、横打ちにはある(克次さんも今はもちろんまた元気に太鼓を叩いている)。毒に近いほど美味なのである。
普通は、ここまで身体を壊すほどやる必要はないのであります。楽しく叩いていればいいのであります。
が、舞台の上にのっかって、お客さんを前にすると120%の力を出そうとしますから、いけない。普段の底力を上げておけば70%の力でもお客さんの目から見たら120%に見えるかもしれない。そうすることがプロの道だという声もある。それも一理だが、でも、そんな大人になってどうする?一回一回その時の力を全部出し切るのもプロではないのか?でも、けがをするのは周りに迷惑をかけるし・・・。ま、僕の考えも揺れ動いているわけです。
日本三大横打ち太鼓(僕が勝手にそう呼んでいるだけだが)の一つ、九州小倉祇園太鼓は直接地元で習ったことはない。藤本吉利(よしかず)さんが習ってきたのを少し教わったことがあるだけ(といっても古い話・佐渡國鬼太鼓座時代)。この太鼓の特長は山車に乗せて移動しながら叩くことにある。歩くリズムが太鼓にも響く楽しい太鼓である。
八丈太鼓は菊池隆さんから習ったが(これも古い鬼太鼓座時代/隆さんも一時座員としてアメリカツアーなどに一緒に参加した)、下打ちがあって表打ちは自由だ。今は八丈らしい表打ちリズムもあるが基本的に何をどう叩いてもいいんだぞ精神が八丈の最大の特長だと思っている。個人個人がまったく違う、それをよし、と認めるところが気に入った。
三宅太鼓(正式には神着木遣り太鼓)は津村明男さんから習ったが、太鼓を地面に置いてそのまま叩いてしまうという発想が、目からウロコ、コロンブスの卵、春のタケノコ(こりゃ、関係ないか?)、言われればなんでもない簡単なスタイルなのに、そのスタイルで叩こうと考えたことがなかった。それをやっていたのが三宅島の太鼓だった。
打つリズムはまったくもってシンプル。なのに何回叩いても飽きない、かっぱえびせんタイプであり、ソフト自虐愛好家タイプ。「ふ〜 きつい〜」「たすけて〜」などと心の中で喘ぎながら、時には声にも出し、泣いた涙も乾かぬうちにまたも叩かずにはおれなくなってしまう不思議な太鼓だ。僕はこれまでこれらの印象をヒントにいろいろな横打ち曲を作ってきた。
中国から帰国して一番最初に作った曲が『さんぱち』(ヒダノ修一と共作)、太鼓グループの練習曲用に作った『まつり太鼓』、多人数用の『始音(しおん)』、三人の『石敢當』、二人の八丈風は『鼓衣(こい)』、などがある。先ほど閉館した渋谷ジァンジァンでは『一人三宅』も披露した。
これからも横打ちの太鼓は叩き続けていきたいと思っているが、横打ちの魅力とはいったい何なのか?
と考える前に、もう一度黄金の三大横打ちに触れてみたいと思ったのが、第二回Oh!太鼓のテーマに選んだ理由。横打ちや 横ヤリ ヨコシマ 横恋慕
横取り ヨコハバ ものともせずに
横道 横顔 住まいは横浜
太鼓の横綱にはなれないけれど
横好きで悪かったか?! ああん ああん
じっくり考えるよりも今はずっと叩いていたい 初夏はやっぱりタイコ横丁(字余り)●『Oh!太鼓』 Vol.2(富田和明的和太鼓合宿) 初夏の横打ち大会
7月1日(土)〜2日(日)
1日 13:00 集合 2日17:00 解散
資格など/中学生以上の男女 初心者 歓迎 約15名
内容/横打ち集中講座
(小倉祇園〜八丈〜三宅 横打ちの検証)
参加費/18,000 円
※宿泊、全食事、交流会費など、すべてを含む (太鼓アイランド 未会員は、別途1,000円要)
持ってくるもの/自由に動ける服装と稽古用靴。汗を
かいた後の着替え、お泊まりセット、筆記用具。
バチを持っている方は、持参してください
神奈川県川崎市/川崎市青少年の家
(問いあわせ・申込み)打組-富田 ? 045-913-5582
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インターネット版 『月刊・打組』2000年 4月号 No.55
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