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富田和明的個人通信

月刊・打組

2001年 5月号 No.66(5月30日 発行)

このページはほぼ毎月更新されます。年10回の発行

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ラーメン博物館の利用法

5月22日

 世の中にはラーメン狂が多いらしいが、僕はソバ、うどん派だ。東に居ればソバが食べたくなり、西に居ればうどんを食べたくなる。でも、ラーメンはそんなに食べたいとは思わない。

 嫌いと言うことではない。旨いと思えるラーメンが少ないからだ。そもそも麺がどうの、スープがどうのと先にウンチクを垂れられると、先ず辟易する。喰ってうまけりゃそれでよし。値段が高ければそれもそこで失格だ。安くて旨くなくては喰う気がしない。

 我が家からさほど遠くない場所(車で20分ほどの距離)に、ラーメン博物館というのがあって、初めて足を踏み入れてみた。そこで二種類のラーメンを口にした。札幌ラーメン「すみれ」と琉球新麺ラーメンだ。不味いとは言わないが、とりたてて美味いというモノではない。ただ、この博物館の昭和33年という時代設定が泣かせる。

 ここで働く(ラーメン店員ではない)お兄ちゃん、お姉ちゃんもその役所にはまって楽しそうに働いているのがいい。特に紙芝居のお兄ちゃんは、熱が入っていて嬉しかった。願わくは、この空間をもっと大々的に広く作って欲しい(クレヨンしんちゃんの映画最新作『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』原恵一監督作品内ではその欲求を叶えてくれているが)。日光江戸村があるくらいだから、新横浜昭和三十三年村があってもいい。そういうものであれば本当に欲しい。僕も年をとったということか。
 ま、ラーメンは腹が減った時に食べればいい。それでもラーメンに何だかんだとこだわるというのであれば、せめて麺は手で引っ張って伸ばして作らなくてはイカンだろう(拉麺・ラーメンの「拉」は手で引っ張るという意味)。これもまたウンチクか?

 僕が好きだったラーメンは、中国北京・中央民族学院内の出店『蘭州拉面館』の蘭州ラーメンだ。中央アジアの蘭州から来た出稼ぎのお姉ちゃん(14、15才)が、客の注文を受けてからメンの種を叩いたり引っ張ったりしてして打つ。これが鮮やか。
 メンの太さも「普通」「幅広の」「極広いの」「一番細いの」と言うと一応希望を聞いてくれる。それでもって客を待たせない。アッという間に出来上がる。当然の事ながらこれは、ものしごく美味い。うう、食べた〜い。何でこれがラーメン博物館でできんのだ?

 それなら仕方がない。入場料の三百円を払って中に入り、駄菓子屋と夜店を冷やかして紙芝居を見て帰る、そういうラーメン博物館の御利用を今のところはお薦めいたします。


しあわせの呪文

5月12〜13日

※太鼓の中から生まれたドンコちゃん/人形製作・上田明子

富田(富)(登山囃子のリズムに乗せて唄う) 
  山に ひびく
  春の 太鼓
  草木も めざめ
  生き物 騒ぐ
  声を そろえて
 ナムキ〜ミョウオ オ チョウ〜ライ

  かがやく 太陽
  五月の 青空
  ながれる 雲に
  そよぐ 風
  心 はずんで
 ナムキ〜ミョウオ オ チョウ〜ライ  

 聞こえる
ドンコ(ドン) どこから?
 あの谷のむこうから
井上(井) 聞こえる
ドン どこから?
 あの山の うえから
三人 耳を すまして
 ナムキ〜ミョウオ オ チョウ〜ライ

 大地が わらう
ドン 大地が うたう
 かなしい ときも
ドン うれしい ときも
三人 みんな いっしょに
 ナムキ〜ミョウオ オ チョウ〜ライ
 ナムキ〜ミョウオ オ チョウ〜ライ

 さあいよいよ始まりました。最初に、今日の出演者を紹介します。
井上智彦さんです。そしてもうみんな知ってるよね、第一回目の時に太鼓の中から生まれた、ドンコちゃんで〜す。
ドン みんな久しぶりだね。ドンコのこと覚えてた?
 ドンコちゃんね、さっき歌ったうたは「登山囃子」というんですが、「と・ざ・ん」って、わかりますか?
ドン ああ、きょうも少ないかもしれないけど(客席を見渡して)、そのあたりに何人か来てるみたいね。
 ええっ?きょう何処に来てるの?ええっと、それは「とう・さ・ん」おとうさんのことでしょう? 僕が言ってるのは「とざん」、ね。おとうさんではありませんよ。
ドン あ、そうかそうか、この前食べたんだけどね。あれはおいしかった。
 おいしかった?
ドン うん、つるつるつるって、お汁まで全部飲んじゃった。
 それは「ど・さ・ん」こ、「どさんこラーメン」のことでしょ? 違うの。僕が言ってるのは「と・ざ・ん」、山に登ることをね「とざん」て言うんです。
ドン 知ってる。
 知ってる?知ってるンなら始めっからそう言ってくださいよ。もうこんなに横道にそれちゃったんだから。
ドン それでどこの山に登るの?
 今日、登る山はね『どんデン山』
ドン どんデン山? どんデン山って変な名前だね。どうしてどんデン山っていうの? 
 それはね‥‥、う〜ん僕もよく知らないんだけど、確かどんデンっていう山の神様がいるとかいないとか‥‥ああ、もうあんまりのんびりしてらんないんだよ、急がなくっちゃ。
ドン 誰ですか、関係のない話ばっかりしてたのは?
 それはドンコちゃんでしょ。
ドン そうか。
 じゃ、準備をして(井上と太鼓の準備)出発だよ!
ドン 出発だっていってもまだ、お弁当も作ってないし‥‥。(準備できるまで少し話す。準備ができたところで)
それではどんデン山に向かって出発!

この後、ちちぶ屋台囃子の太鼓を叩いて大急ぎで山に登る。山の中腹まで来たところで、色々な動物たちと出会い、最後の一踏ん張りは客席の子供たちも参加して「山の食べ物の太鼓」を叩く。そしてみごと無事に頂上に到着。ところが食べ物をいっぱい食べたせいか眠くなってしまい、お昼寝をしてしまうと、その間に先ほどの動物たちが現れて太鼓を叩く。ハッと目覚めた時にはその動物たちの姿も消えていた。あれは夢だったのか?あわてて山を下りようとするが、今度は道に迷ってしまって帰れなくなってしまう。さあ、どうしよう!山の神様は現れるのでしょうか?
5/12に行われた『てんドンカツドンたいこドン・山の神編』あらすじより

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 子供が好きなのか、嫌いなのかはよくわからない。ただ、自分が子供になることがある。子供になりたいときがある(ここで言う子供とは3才〜7、8才児のこと)。
 子供の世界もそんな単純なものではないだろうけれど、ささいなことにビックリしたり、恐くなったり、喜んだり、と、感情を露わにすることは楽しいことだと思う。だから妙に冷めた子供たちからはバカにされるくらいの大人の子供でいたい。
「子供だまし」という言葉はあまり良い意味に使われないが、これも楽しい。どちらが騙されているのかわからない面白さがある。でも、いつでもどこでも自分が子供になれるという業をまだ、僕は持ち合わせているわけではない。
 
 新宿南口、プーク人形劇場の扉を開ける。そこから顔を覗かせる人々と会釈を交わすと、不思議と気持ちがなごむ。そこでは自然に僕も子供に戻ってしまう。
 てんド〜ン
 カツド〜ン
 たいこ、ド〜〜ン
小さいけれど歴史の染みついたこの劇場で、そう大きな声で叫ぶと、僕はなんだか一時の幸せな気分になれる。

※ドンコちゃんを囲んで打ち合わせミーティング中/左より、井上智彦、青木永、そしてドンコ

※プーク人形劇場正面玄関前で出演者一同と/左より、井上、青木、畑真由美、ドンコ、渡辺真知子、そして富田

※上写真は、13日の子供ための太鼓ワークショップ『みんな いっしょに たいこドン』/劇場舞台と客席の椅子を半分取り払って太鼓の広場を作りました

※次回の『みんな いっしょに たいこドン』は、『夏休み みんな いっしょに たいこドン』です。8月28日(火)11時と1時半に開かれます。お申し込みはプーク人形劇場まで

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インターネット版 『月刊・打組』2001年 5月号 No.66

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