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富田和明的個人通信

月刊・打組

リクエスト公開 No.6(1999年10月22日 発行)


『明日の太鼓打ち

 東京打撃団「日本の太鼓」出演について 1997年11月7日   

 面白い太鼓を叩きたいと思う。
 惚れ惚れするようなかっこいい太鼓でもなく、その姿を見て思わず手を合わせられるようなありがたい太鼓でもなく、リズムが変わっていて面白いというような太鼓でもなく、長い歴史があるというだけの太鼓でもない、面白い太鼓。
 それはその音を聞いて、その叩く姿を見て、いや太鼓を叩かなくてもいいかもしれない、その太鼓を見たお客さんが思わず声を上げて笑ってくれたり、その時に笑えなくても帰りの電車の中で誰かと目が合ったタイミングに思い出し笑いが止まらなくなってしまったり、そういうことがなくても布団を被って眠る体制を固め明日の朝起きる時間を目覚ましにセットしようとした時になぜだか忍び笑いが始まったり、まさかそんなことはありえないと3年8ヶ月が過ぎたある日いつものようにタマネギをみじん切りにしていた夕暮れ時にあの時の太鼓が耳鳴りのように押し寄せたり(単なる耳鳴りかもしれない)、それからどれだけ時間が経過した後かは分からないベッドの横でご臨終を告げる医師の声が心地よい太鼓のリズムに聞こえたりするような、そんな楽しい(?)太鼓のことだ。
 しかし具体的にどういうものかはここで書けるものではない。実は僕にも正直なところ分かっていない。ただ、最近笑えた太鼓がないこともない。
 国立劇場『日本の太鼓』のビデオを見ていて(前回に引き続き資料視聴室にまた行ってきました)、第二回出場の福島白河天道念仏と神奈川藤沢の江ノ島囃子は、楽しめた。どこが面白いのか説明する気は今はない。みんなが同じように面白いと思えるかどうか分からないし。一つだけ種を明かすと、とても無駄と思えるようなことをしていることだろう。それに誰の為にでもない太鼓だと、思える瞬間があることだろうか。ま、理屈はそんなところにしておこう。
 他に今年出演した東京打撃団のビデオも見た。ほんとうは5人組なのだが林田博幸が倉本聡の芝居に出演中でこの時は4人組だった。画面を見ていると関取・舞の海が服を着て元気に動いていた。おかしいな、いつの間に他の番組に変わってしまったんだろうと最初は考えたが、いつも見慣れている打撃団の他のメンバーの姿はそのままに映っていた。10分ほど画面を見ていたが、どうもあれは僕が太鼓を打っている姿らしいことに気がついた。僕の姿だけ異様に太って見えるのは、たぶんモニターの調子が悪いのだろう。自分で毎日鏡に写して見ている姿はこんなのではない。
 僕はちょっとガッカリしながら残りの演奏を見ていたが、例えば、ほんとうにここに東京打撃団のメンバーとして舞の海がいて太鼓を打っていれば、これはこれで面白い太鼓になっただろうなと考えたりもした。しかし前述した面白い太鼓の定義と、これは少し違うかもしれない。


 

国立劇場「日本の太鼓」パンフレット表紙より
    

(後記/1999.10.22)

●『日本の太鼓』にはこれまでに4回、出させてもらいました。1回目が佐渡の國『鬼太鼓座』のメンバーの時、2回目が『鼓童』の時、3回目が『東京打撃団』で、4回目が昨年の韓国の太鼓の案内役でした(東京打撃団メンバーとして出演)。

●この東京打撃団で出演した模様は、国立劇場『日本の太鼓』がビデオになって販売されています。お求めの方は、キングレコード商品番号「KIVM227」でレコード屋さんに注文して下さい。カバーの一番目立つところに僕の写真がありますが、素顔ではなく残念ながらお面を被っています。


キングレコード商品番号「KIVM227」

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