インターネット版●

富田和明的個人通信

月刊・打組

2006年 11月号 No.111(11月23日 発行)


清水の舞台から飛び降りました

本物の大太鼓を叩きたい

10月24日

 

  実は私、新大太鼓(現在の平胴タイプではなく長胴です)を購入することにしておりまして、それが年内に完成する運びとなりました。

 

 この夏、東京国際和太鼓コンテスト大太鼓部門で四尺の長胴大太鼓を自分の腕で叩いたことから、私の中で何かが目覚めてしまいました。

 

 直後に書いた感想ブログの中では「大太鼓は買えるものではないし、買うつもりもないし」と書いたのですが、

 そう書いたとたん、グラグラと「欲しい」気持ちが燃え上がって来ていることを感じたのです。

 

 コンテストが終わってから、何だか悶々としていた気持ちがなんだったのか、最初は判らなかった‥‥。でも時間が経つにつれ、

「やっぱり本物の大太鼓を自分で持ちたい」

 

 そういう声が体の中に強くあることが判って来たのです。

 

 

 しかし‥‥・ 「欲しい」けれど、先立つものはどうやって‥‥・、それに買ってしまったらそれをどこに置いておくのか、どうやって運んだらいいのか、また、叩いて練習できる場所 があるのか‥‥・

等々、考えすぎたら思考は止まりがちになります。

 

 

 来年は私も50歳、若い年齢ではありませんが、まだ老齢でもありません。

 太鼓打ちとしての業を自ら選び、この一生を全うするまでにこれから何ができるのか、 何をやりたいのか、思い残すことはないのかと考えていった時に、あの夏の日の、奥深い音色が胸に響いた瞬間を思い出したのです。

 

 やっぱり、欲しい。 買いたい、そして買うには今しかない。

 そう心に決めて、浅野太鼓さんに連絡を取りました。

 

 

 いま、器だけが大きい太鼓ならいくらでも出回る世になりましたが、やはり本物の重量感と響きが出るのは浅野の大太鼓しかありません。 あの大太鼓が欲しかったのです(まだありませんが‥‥・)。

 

 

 来年2007年10月1日、私の太鼓芸能生活30周年を迎えます。

 主宰する和太鼓ワークショップ『太鼓アイランド』も来年5月で10周年。

 3月24日は、東京で第三回・太鼓アイランド発表会『打一好祭2007』。

 6月〜7月にかけて故郷・淡路島で『ありがとう淡路島!太鼓巡礼歩き旅』

 11月には徳島で始めての発表会+コンサートも企画しています。そして、淡路島で『太鼓アイランド太鼓道場』も持ちたいと動き始めたところです。

 

 

 この太鼓の響きを皆さんの胸にも伝えたい、そしてまた皆さん自身でもこの響きを味わって頂き、太鼓を叩ける幸せを共有したいと願っています。

 

 

 清水の舞台から飛び降りました(つもり)が、終わりではなく、始まりました。

 

 

 ご一緒に楽しんで頂ければ、この上ない喜びです。 今後とも、よろしくお願い申し上げます。     


この鼓を ならすのは あなた

大太鼓がやってきた日

11月22日

 新大太鼓が届けられる日を迎えた。

 

 今朝から興奮して(もう何日も前からハイ状態ですが)、特に今朝は三時に起きてしまい、さすがに昼寝を30分しました。

 約束の時間は夕方5時。

 場所は東京亀戸、みなさま御存知カメリアホール(太鼓アイランド江東のホームグランド。打一好祭の会場としても使わせていただいています)。

 

 

 来ました、来ました!

 石川県白山市を出発して約七時間、浅野太鼓社長・浅野恭央(やすお)さん自らが運転する三トントラックが。

 

 そして、その中にはカバーに包まれた僕の大太鼓と、組み立て用台パーツだけが載っていました。

 ウ〜ム‥‥‥、デッカイ!

 

 

 まずは、その印象。台のパーツもかなりのボリュームがあります。

 

 僕のハイエースハイルーフに載っけられるのか‥‥‥。 早くも帰りの心配もしてしまう僕。

 ギリギリで載ることが確認されてはいるものの、改めて心配した。そのくらい大きい。

 

 太鼓アイランドメンバーにお手伝いをしてもらって、みんなでホールまで運び、そしてカバーを開けてみましたら、

 

 

 

 

 ピッカピッカの大太鼓が、ぽっかりとその姿を現しました。

ついに、この時が来た

口径三尺二寸・最大径四尺二寸・胴長四尺一寸五分

太鼓重量百六十二キロ、それを支える太鼓台重量百七十五キロ、合計三百三十七キロ

この道四百年・浅野太鼓楽器店 職人の皆さんが心を込めて、腕に磨きをかけて、造って下さいました

直々に届けて下さった社長・浅野恭央さんと

お祝いのお酒も頂き、握手

ありがとうございました!

 そして、太鼓アイランド特製・発響二尺大バチを握って、

 

 いよいよ初打ち。

 どんな音が鳴ったのかは、皆さんには、実際にご自分の耳と体で感じて欲しいと思います。

 

 

 

 

 この太鼓はすべてが新しく、皮もかなり張ってあります。

 響きは、これから打ち込み、叩き込み、様々な想いが刻み込まれて、そこから生まれてきます。

 もっともっと、これから、良くなるのです。

 

 新しい太鼓であれば、立派な太鼓であれば、それで鳴るというのではありません。

 

 思い返せば11年前、三尺三寸大平胴太鼓も届いたばかりの頃はまだしっくり来ませんでしたが、今はとても良い感じで響いてくれています。

 

 

 この新大太鼓も11年後は、と考えると‥‥‥私の還暦でした。

 還暦目指して打ち込みたいと思います。

 

 皆さんにも、打ち込んで頂いて一緒にいい音を響かせていきたいと思うのです。

 

 

 僕は今日叩いていて、おかしな話かもしれませんが、ずっと和田アキ子さんが唄う「あの鐘を鳴らすのは あなた」が聞こえていました。

 もちろん、「鐘」のところが「鼓(たいこ)」に替って

 

  この鼓をならすの あなた〜

 

 と聞こえていました。

 

 

 町は今 眠りの中 この鼓をならすのは あなた

 

 人はみな 悩みの中 この鼓をならすのは あなた

(阿久悠さん、すみません。歌詞替わっています)

 

 

 

 

 まだ産まれたばかりの新しい太鼓には、どんどんと打ち込み、打ち手も一緒になって成長しなくては、まだまだ本当の音を鳴らすことはできません。

 

 こうしたらいいかな、どうしたらいいのかな、と頭と体を動かして考え、願い打ち続けること。

 それこそが、楽しみなのだと思います。

 

太鼓アイランド江東『弾!打から団』のメンバーと  カメリアホールにて photo/YAZAKI sayaka

富田和明 太鼓芸能生活30周年記念

新調大太鼓「三尺二寸長胴太鼓」データ 

浅野太鼓楽器店 特注特級品 

口径三尺二寸(約96センチ)・最大径四尺二寸(約126センチ)・胴長四尺一寸五分(約125センチ)・台乗高八尺(約240センチ)

太鼓重量百六十二キロ、太鼓台重量百七十五キロ、合計三百三十七キロ

平成18年11月吉日完成品

 


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9月20日(土)〜21日(日) 川崎市 青少年の家

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インターネット版 『月刊・打組』 2006年11月号 No.111

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